おめでとうアーリオオーリオ / 挫折と復活の物語

生徒の第一志望校合格をお祝いして
塾長の手料理で昼食会をしました。

毎年卒業生の興味に応じて
『雪山キャンプ』、『スノーシューと足湯』などを企画するのですが、
今年は生徒が愛媛県の島の高校に進学するため
引越しで忙しいので食事会にしました。

麺類大好きな生徒とは、日曜日の脳力授業の昼食などで
ラーメン、カレーうどん、蕎麦などを食べてきましたが、
イタリアンがまだでした。

塾長は学生時代に厨房でバイトしていたので腕に覚えがあります。
イタリアンの料理長から
アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノを教わりました。

料理長いわく
「シンプル故に誤魔化しが効かないアーリオ・オーリオは
 料理学校で最初に教わる基礎の料理であり、
 卒業試験の課題でもある」

この話をしたら「それが食べたい!」と生徒。

卒業に相応しいオーダー、承りました!!

おめでとうアーリオ・オーリオ

一品目『菜の花とシラスのアーリオ・オーリオ』

春を感じる一皿 『菜花とシラスのアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ』
基本にして奥義!! アーリオ・オーリオを伝授

二品目『ローマ風 サルティンヴォッカ』

サルティンヴォッカ は“口に飛び込む” という意味
下宿先でも作れるように、レシピを渡しました。
左から順に
塾の花壇でセージ摘み
“薄力粉 - 豚肉 - セージ - 生ハム - 薄力粉” と重ねていきます
フォンドボーを加えてます
ペッパーミル パフォーマンス!!

三品目『生豆からローストしたコーヒー』

ブラックもいける口の生徒が選んだ豆は
ウガンダ産の『アフリカンムーン』
スムースな飲み口で、私も大好きな豆です。

左から ほうろくで焙煎、フルシティロースト、生徒に豆を挽いてもらってます、塾長が美味しく淹れてます

挫折と復活の物語

コーヒーを飲みながら「いろいろあったよね〜」と
思い出を振り返りました。

当塾に来たのは中2の12月からなので
1年3ヶ月しか経っていないのですが、
お互いにもっと長い付き合いのように感じています。

以下、生徒本人に目を通してもらって、
不登校になっていった経緯や復活の経緯を書きます。
子供達の悩みや、その状況はそれぞれ違いますが、
「私の経験が誰かの役に立つなら」と快諾してくれました。

ここ数年、不登校の子が激増しています。
もちろん個別の事情はそれぞれにあるでしょうが、
全体の1〜2割が不登校ということは、
ベースとなる社会的な原因があるのだと思います。

その説明の一つは子供達の睡眠不足かもしれません。
『日本の子供の睡眠時間は世界一少ない』
という調査結果があります。

この生徒の場合、
不登校になって当塾に来る前の睡眠時間は
「ウィークデーの合計が8時間に満たなかった」
のだそうです!!

「え? どういうこと?」

幼稚園年長の頃から全国チェーンの塾に通い、
毎回宿題が出たのだそうです。

だんだんと上位のクラスになり、宿題の難易度と量が増えていきました。
「宿題が終わらないのは悪いこと」
「宿題を提出できないと責められる」

という恐怖心から机に向かい続け、
半纏を着たまま机で寝落ちしてしまう睡眠時間が、
月〜金の合計で8時間弱。
「ウィークデーはベッドで寝たことがなかった」
のだそうです。

脳と身体が発達する小・中学生は毎日10時間以上寝てほしいです。
睡眠が極端に少なければ、
精神的な弊害が出るのは当たり前です。

中2の夏から中3の夏までは不登校だったそうです。

実際には、宿題を出さないことで叱責されたり非難されたりしたことは
全国チェーンの塾でも学校でもなかったのですが、
本人の心象風景では
「出すべきものを出していない自分は悪い子」
「学校を休んだ自分は教室に居てはいけない子」

という世界が見えていました。

そして、
『ルールを完璧に遵守すること』
『他人にどう見られるか』
心身が過剰に反応するようになり、
『死ねば楽になれる』
『私の死体が見つかったら、世の中が私の事例について考え、

 少しは世の中が良くなるきっかけになるのではないか』
と思うようになりました。

中2の12月、お母様が当塾のHPを見つけてくださって、
お父様が相談に来てくださいました。

ご両親は我が子のために色々悩み、頻繁に相談してくださいました。
お母様は雨の日も風の日も、自転車で送り迎えに通ってくださいました。
本当に頭が下がります。

事態が変わり始めたのは中3の夏でした。

お父様がネットで『地域みらい留学』というサイトを見つけてくださいました。
過疎と少子化が激しい地方の高校は、地域から進学してくる生徒だけでは維持できないため、
各校が特色ある教育を工夫して広く全国から『留学生』を募集しています。

8月
瀬戸内海の弓削島の高校の学校説明会に参加し、
暖かな先生や在校生に触れ、島の自然を感じて
「この学校に行きたい!」
と目標ができました。

受験が終わった日 電動自転車を借りて島を一周したときの写真

『弓削高校に推薦で合格する』という目標が明確になりました。

中学校の出席日数不足、課題の未提出、クラスの授業に出ていない等の理由から、
通知表はオール1
「したがって推薦状の書きようがない」
という状況でした。

ただし、この生徒は本当に頭が良い子なのです。
どんな高度な話題も順を追って説明すれば理解できます。
本人が望むかどうかは別として、
群馬県内トップの高校を目指したなら
合格点に届いたであろうポテンシャルを持っている子です。

通知表の評価や学年順位、テストの点数などの“加工されたデータ”は
必ずしもその子の本質を反映しません。
“未加工の生データ” からその子の本質を見ることが大切です。

望む未来を取りにいこう!!
そのためにまず
・毎日、一瞬でいいから学校に顔を出して出席をつけること
・提出物を出すこと
 そのために、塾での時間は課題を解くことに使う
・定期試験を受けること
から始めました。

2学期の通知表から1が消え、3や4もつき、
推薦状を書いてもらえました。
担任の先生も応援してくださいました。

望む未来に向けて行動を始めると、
塾にも遅刻せずに来られるようになり、
休む回数は激減しました。

1月
推薦入試の課題である『400字作文』を特訓し、
1ヶ月で30枚以上の作文を書き上げました。

最初は0点でした。
徐々に書けるようになり、
1月末には満点の作文が時間内に書けるようになりました。

1ヶ月よく頑張った!!
本当に弓削高校に入りたかったんだね。

作文のお題を通して
自分の経験、自分の考え、自分の将来に毎日向き合いました。

そして、
「不登校で自殺を試みるまで苦しんで、
 そこから元気になれた自分だからこそ
 不登校の子の気持ちに寄り添ったサポートができる。
 そのための専門知識を身に付けたい。」

という希望を持つようになりました。

今年の弓削高校は推薦入試の希望者が激増したこともあり
残念ながら選に漏れてしまったのですが、
そこで心が折れませんでした。

高崎で滑り止め校の合格は確保していたのですが
「5教科の一般入試で弓削に行く!!」と宣言。

お母様と
「強くなりましたね〜」
と感動しました。

一方で、塾長としては
「おいおい、聞いてないぞ」
「2週間ちょっとで5教科を仕上げろと!?」

こういう無茶振り、大好物です!!(笑)

その日のうちに愛媛県の過去問をAmazonでポチり、
生徒本人と私が同時進行で過去問の出題傾向分析を開始。

一昨年の問題を5教科すべて
本番と同じ条件で解いて現在地を確認。
国語で8割取れるのが心強い!!

2週間でやる意味のあることと無いことを仕分け、
数学と理科の底上げに集中。
平日の授業に加え、土日祝は6〜7時間みっちり授業。

学校の授業に出ていなかったから知らないだけで、
やったらやっただけ吸収する生徒。
危なげない仕上がりで一般入試に望み、
見事、望む未来を掴みました!!

『手に入れたい未来ができて、そのために今できる行動をする』

この行動が生徒を長い苦痛から救いました。

であるからこそ、必然として、最後の脳力授業に
『投資 〜なりたい未来に向けて 今もっているエネルギーを投入しよう〜』
を選んでくれたのだと思います。

大切なことは全部伝えました。

卒業です。

君の未来に幸多からんことを!!