AIが拓く時代
こんにちは!
ワクワク塾 塾長の福田歩です。
昨夜、今年のノーベル化学賞が発表されました。
受賞したのはGoogleの関連会社で
『アルファ フォールド』という
タンパク質の立体構造を予測するAIを開発した人たちでした。
実は私、前職の製薬会社で、
このAIによって駆逐されることとなる技術で
タンパク質の立体構造を解き明かして
製薬研究をしていたのです。
このAIが登場したのは私が会社を辞めた後でしたが、
科学雑誌で『アルファ フォールド』の記事を読んで
「とんでもないものが出たな!!」
と衝撃を受けました。
AIは我々人間には不可能な方法で課題を解決します。
人類が持ちえなかった方法論の登場です。
科学の歴史を見ていると、
新しい技術、新しい観測手段、新しい方法論が登場すると
飛躍的に科学が進歩します。
今年のノーベル賞は物理学賞、化学賞ともにAI関連の受賞です。
AIの登場とともに科学が新たな飛躍の時代に
突入したことは間違いありません。
否応なしに、私たちの社会の有り様も劇的に変化していきます。
私たちの生活、
身の回りの道具、
社会が求める職業、
働き方、
人間が学ぶべきこと、
つまり教育の中身やスタイルもガラリと変わるでしょう。
これから何が起こるかわかりませんが、間違いなく
今の私たちが想像もできないことが出来るようになります。
ワクワクする時代に突入しました。
変わることを好まない大人には
地獄の時代かもしれません。
ですが、これから学んでいく子供達に
その苦しみはありません。
ワクワクする世界を楽しみましょう!!
子供の教育に関わる大人たちには、
親であれ、教育者であれ、何かの活動の指導者であれ、
子供達が新時代にスムーズに進んでいけるように工夫が求められます。
まずは自分がAIを使ってみること。
新しい技術に興味を持つこと。
そして子供と一緒に使ってみること。
子供にとっても、大人にとっても
好奇心こそが新時代へのパスポートなのだと思います。
『アルファ フォールド』って何?
科学に興味のある方にご説明します。
『DNAの二重らせん構造』という言葉をご存知の方も多いと思います。
この構造を発見したワトソンとクリックもノーベル賞を受賞しました。
彼らはDNAの結晶を作りました。
結晶とは、分子が規則正しく整列したものです。
DNAの結晶にX線(レントゲンもX線の一種です)を照射すると、
“規則ただしく並んだ構造” にX線がぶつかって散乱します。
散乱したX線をフィルムに感光させ、
現像すると模様が写ります。
(レントゲン写真と同じです)
この模様のパターンから逆算すると、
元の結晶がどんな “規則ただしい構造” をしていたのかがわかります。
このようにして、
「DNAは二重らせん構造をしている」ことが発見されました。
製薬会社では、病気に関連するタンパク質(標的)の
構造にピタリとハマる薬を作りたい。
だからタンパク質の構造が知りたい。
そこでタンパク質の結晶を作って、
DNAのときと同様にX線を当てて構造を解明します。
ただし、タンパク質の結晶を作ることが
とーーーーっても難しい!!
(私はこの仕事をしていました!!)
組体操で一番下をやったことがある人はわかると思いますが、
重力による歪みがキツくて
タンパク質が規則正しく並べないこともあります。
なので、国際宇宙ステーションの無重力環境で
タンパク質の結晶を作る試みさえあります。
とにかく、ものすごく苦労してタンパク質の構造を明らかにします。
その成果は論文にすると同時に、
『タンパク質構造データベース』に登録され、
人類共有の知的財産として利用されています。
タンパク質は20種類のアミノ酸がつながってできています。
データベースには、
「どのようなアミノ酸の配列が、どのような立体構造を作るか」
というデータが登録されています。
『アルファ フォールド』はこのデータベースを学習し、
タンパク質のアミノ酸配列情報から立体構造を正確に予測します。
われわれ科学者が
本当に苦労して結晶を作っていた、
困難ではあるが、
知恵と工夫、職人技で誇らしくもあった仕事が
もう不要な時代になりました。
もう一度言おう。
「とんでもないものが出たな!!」