なぜ歴史の勉強をするの?
こんばんは!
ワクワク塾 塾長の福田歩です。
生徒たちに
「なぜ学ぶのか?」
「学校で与えられる学びや、受験のための学びをしていて本当に良いのか?」
「将来どう生きたいか?」
について考えてほしくて
『学びの転換はなぜ進まない?』
という討論番組を観て、感想や意見を交換しています。
文科省の官僚も、一部の先進的な教育者も、
昭和からマイナーチェンジしかしていない現在の学校教育や受験のシステムでは、
人口が激減し、生成AIが登場した今の社会に対応できない
ことを問題視しています。
番組を観た中2の生徒から
「『歴史』って何で勉強した方が良いの?」
「何の役に立つの?」
という素朴な疑問(私にとっては課題)をもらいました。
この生徒は歴史が嫌いなわけではなく、
むしろ歴史の本を自分で買って独学しています。
ただ、英語や数学など他の教科と違い、歴史だけは
具体的に何の役に立つのかイメージできないとのことです。
私はまず
「高いところからは遠くまで見える」
「人の背丈では近くしか見えない」
という話をしました。
この例えはすなわち、
過去の出来事が『なぜ』、『どのよう』に起きたのかを知り、
自分の頭で考える人は、歴史の『類型』『型』『概念』をもとに
現在起きている事や、未来に起こる事が明瞭に『見える』ようになるということです。
教科書に太字で強調されている言葉を覚えて、
それでテストに正解できるだけでは
確かに何の役にも立ちません。
歴史から得た『類型』をもとに、
身の回りのことや、これから先のことを
自分の頭で考えるとき、歴史が視野を提供してくれます。
その分野の達人として
フランスの歴史人口学者である
エマニュエル・トッドを紹介しました。
「なぜ学ぶのか?」
「どのように学ぶべきか?」
「歴史は何の役に立つのか?」
という問いに対する示唆が、この本に詰まっています。
生徒に聞きました。
「第二次世界大戦はどうして始まったか知ってる?」
「ドイツのヒゲの人が東の国に戦争を仕掛けた。」
「そうだね。ヒトラー率いるナチスドイツがポーランドに侵攻したんだね。」
「じゃぁ、なんでドイツはポーランドを攻めたの?」
今から約100年前にウォール街で世界恐慌が起きた。
世界中に経済の混乱が広がった。
イギリス、フランスなど植民地と資源を持つ国々、
いわゆる『持てる国』は自国と植民地の中だけの
『ブロック経済』を敷いた。
一方、ドイツ、イタリア、日本の『持たざる国』は
『持てる国』を目指して領土を拡大しようとした。
それがドイツのポーランド侵攻であり、
日本の大東亜共栄圏であった。
世界は『持てる国(同盟国)』と『持たざる国(枢軸国)』に分断され、
世界大戦に突入した。
ひるがえって現在
エマニュエル・トッドが言うように世界は分断の度を強めている。
ちょっと前までは「グローバル社会」「グローバル経済」などと言っていたのに。
アメリカを核とする先進民主主義国と、
中国・ロシアを中心とする権威主義(独裁主義)国
に大きく分断されている。
トッドは、
アメリカがウクライナに武器を供与している以上、
実質的にアメリカとロシアが戦争しているのだから、
第三次世界大戦はすでに始まっていると考えている。
他にも、朝鮮戦争は停戦中であり、
中国は台湾を狙っている。
日本は地理的にロシア、中国、北朝鮮という
3つの核を保有する権威主義国に隣接している。
岸田総理が「増税メガネ」などと揶揄されている。
防衛費をGDP比1%から2%に増やし、
その一部は増税(所得税・法人税・たばこ税)で賄うとしている。
自民党新総裁に9人が立候補している。
増税について、憲法改正について、経済について......
それぞれの主張を展開している。
どんな人が総理大臣になったらいいかな?
アメリカでは大統領選挙。
現バイデン政権は中国製EVにかける関税を25%から100%に上げた。
トランプはさらに高い関税をかける品目の範囲を広げるべきだと言っている。
共和党、民主党どちらの政権になっても
先進民主主義国と権威主義国の分断は鮮明になるのだろう。
アメリカ国内の分断も後戻りできそうにない。
「日本の総理大臣、アメリカの大統領
どんな人になって欲しい?」
「分断した世界がいい?」
「世界が繋がっていた方がいい?」
「どんな世界がいい?」
生徒の中で
本やニュースで知っている言葉と
初めて聞いた言葉が繋がりを持ち、
意味を成したようです。
『何のために歴史を学ぶのか?』
私なりの回答を受け取ってくれたみたいです。
授業終了後、「先生、この本(『大分断』)借りていいですか?」
「おー、エマニュエル・トッド読む!?」
「スゲ〜な!!」
生徒の知的好奇心に火がつきました。
良い授業をしました。